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森の木、アセビ。

 ツツジ科の常緑低木、庭木用に植栽もされます。別名アシビ。本州、四国、九州の山地に自生し、早春にちいさな白い釣鐘形の花を房状につけます。葉の緑、花の色と形状、新芽のやわらかな光沢のある紅色など美しく、日本では古くから花木として親しまれています。有毒植物であり、馬酔木と書くのは、馬が葉を食べると酔った状態になることに由来。

 アセビには、特別な思い入れがあります。そのひとつ。わたしどもが山を購入した際、山の木のほとんどが伐採されていましたが、ただ松とこのアセビだけが残されていました。別荘地分譲予定の山であったため、業者の判断でこの二種が伐り残されたのです。業者にとっては、雑木は雑木でしかなく、庭木にも利用される松とアセビだけが、価値ある木と映じたのでしょう。雨の降る初夏の頃、わたしたちは始めてこの山のアセビに出会いました。緑の葉が雨に濡れ、谷状の山全体が明るく輝いていました。

 いまひとつ、アセビと言えば、万葉の歌が思い出されます。集中に十首詠まれていますが、なんといっても次の歌が有名です。

※ 磯の上に 生(を)ふる馬酔木を 手(た)折らめど 見すべき君が 在りと言はなくに

 大伯皇女(おおくのひめみこ)が、弟君である24歳の大津皇子(おおつのみこ)の死を悲しんで詠んだ歌です。「岩の上に生えるアセビの花を手折りもしましょうが、お見せしたいあなたは、この世にいるというのでもない……」。謀反の疑いで処刑され二上山に葬むられた大津皇子の悲劇は、その妃の山辺皇女の、髪をふり乱しはだしのまま後を追って殉死したとの日本書紀の記述により、さらに哀れみ深いものとなりました。

※ 万葉の 植物とわが なつかしむ 馬酔木の花が 散りがたになりぬ (浦田整子)

 古代の悲しみを包み込んだ、やさしさに充ちた歌です。

※ 清楚なる 乙女ら想わせ 咲き初むる 山のアセビの 花房の色 (自作)

 しろじに紅ほのか差すもあり、みどり帯びるもあり、淡い瑪瑙の色もあり、アセビの花の色もさまざま。

滝のように。
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角度を変えて。
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3.24撮影
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森の木、ヒノキ。

 ヒノキ科の常緑高木。日本特産樹種。独特の香り・艶があり、耐水性・耐久性に富み、日本では最良の建築材とされます。伊勢神宮や世界最古の木造建築・法隆寺などに使用され、その用途の歴史は、古代日本の歴史と重なります。

 テレジアの森に生育する樹木を紹介しようとして、まず第一にヒノキをあげた理由は、実に単純です。先日その輪切りにしたひとつを、自宅に持ち帰ったからというだけに過ぎません。玄関先の物置用にと、実用のために持ち帰りました。

 しかしヒノキについてウェブ検索をしてみると、日本とたいへん深い関りを持つ木であることが知られます。その語源は、神宮の用材に用いるところから「霊(ひ)の木」、或いは太陽をあらわす「日の木」のいずれかであるとされます。

 こうした立派な由来のあるヒノキですが、テレジアの森には、ごくわずかに生育しているだけで、しかも樹齢はせいぜい三十年内のものばかりです。三十年前に山の木のほとんどを伐採しているため、現在のヒノキは、その後自然生えしたものばかりです。

 ところで大石さんの言葉が、思い出されました。大石さんは、作手の自然ガイドの講師をしています。その自然観察会のさいに、ヒノキとスギの区別がつかない人たちがいると、驚いていました。わたしには大石さんの驚きも分かりますし、区別できない人が居るということも理解できます。また以前テレジアの森を訪ねてくださったインタープリターの方も、その当初は、クヌギとコナラの区別もつかなかったと、述懐されていました。

 分かっている人には常識以前の知識であっても、知らない人にしてみれば、まったくの未知のものにほかなりません。わたし自身、ヒノキについても、今回はじめて知ることがほとんどでした。高価な建築材程度の理解でした。人生終わるまで、学びの連続ですね。

精油を含んでいるため、乾かしています。
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郵便受けに入らないものなど、こんなふうに利用します。
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3.18撮影

作手の森から、東北の地に。

 東日本大震災から二年が過ぎました。新聞・テレビでは、この時期特集が組まれ、被災した人々のその後の状況が報道されています。遠い地に安んじて住んでいるわたしなどが、取り立てて述べることもありませんが、それでもやはり、多少の心の痛みを伴いながら、かの地に思いを寄せることもしばしばです。

 以前記したように、わたしたちは若い頃、東北の岩手県盛岡市に七年を過ごしました。娘が生まれたのも、かの地。わたしたち夫婦にとり、盛岡は心のふるさとであり、娘にとっては、生まれ故郷そのものです。盛岡市は岩手県の内陸にあたり、甚大な被災からはまぬがれました。でもわたしたちにとり、思い出に残る岩手はひとつのものです。

 メディアでは、原発事故の被災者も含め、苦難の中で前向きに生きる人々の姿が報道され、また反面、心の傷にいまなお苦しむ人々の現況などが報道されたりもします。そのいずれにせよ、遠い地で安楽に暮らすわたしたちとはかけ離れた、あまりにも重く複雑な厳しい人生であると実感させられます。

 ここ作手の森は、テレジアの苑は、なぜか岩手の森を連想させます。自然のゆたかな懐にいだかれている、心のあたたかさを感じます。この森から、かの地の森に、海に思いを馳せることもしばしば。感傷に過ぎないわたしの気持ちですが、被災された東北のみなさんに思いを馳せ、その悲しみとともに、そして希望とともに生きてゆきたいと思います。

※野に群れて ちいさな青い 花が咲き ふいに泣きたく なりてよぎり過ぐ

明るい陽気に誘われ。

 一昨日4日、新城市により、作手支所の市職員が市営住宅入居者の家賃を着服していたこと、及びその処分が発表されました。わたしは、それを昨日の新聞報道で知り、食事のさいには妻との間で話題になりました。がっかりします。あんな小さな地区で、こんなことが起きるなんて、旧作手村に抱いていたイメージがあらためてダウンします。

 その4日(月曜)、わたしたち家族は、日帰りで作手にゆきました。ほぼひと月ぶりになります。その間豊田地元地区の集会、雪、体調不良などで訪れる機会がありませんでした。またガソリン高騰の昨今、日帰りでの作手行きも迷ったのですが、それなりの用事もあり、陽気の良いのにも誘われ、4日月曜、例によって妻と娘とともに出かけることにしました。

 まず第一に向かったのは、シルバー人材センター。山の木の伐採を依頼し、それが済んだとのことで、その費用を支払いに訪れました。センターは「道の駅」の施設内にあり、ついでにいつもの豆腐屋さん、山家市にも立ち寄り買い物。月曜ということもあり、ほかに人かげはほとんどなく、施設を独占しているかのようでした。

 次に向かったのは、郵便局。ここもやはり或る支払いのため。ただ豊田の郵便局よりは、はるかにのんびりしていて、職員の応対も親切。ここらあたりは、冒頭の不祥事からは縁の無い本来の作手郷の風景を感じさせます。郵便局でなければならない、ちょっと面倒な手続きには、都市部よりこうした村の郵便局の利用がお勧めです。

 農協での買い物のあとは、大石さん宅に立ち寄りました。実のところ、シルバーに依頼した木の伐採は、大石さんにお願いしたのです。ちょうど昼どきでしたが、お礼のご挨拶に伺い、ついでに水もいただきました。大石さん宅の井戸水の旨さは、市販のものよりはるかに上質で、遠慮しながらもずうずうしくいただいています。

 昼ごろ、私どもの山、テレジアの森に到着。「道の駅」で買ったパンを家族三人で食べ小休憩。その後、娘を山荘に残し、わたしは妻とともに山をひとめぐり。カメラ片手に小一時間。大石さんによる伐採あとを視たり、……。風もなく、青空におだやかな日差しの中を、夢見る気分でめぐりました。現実そのものがファンタジーでした。

※ わたしの 心は踊り わたしの 魂は歌う かの谷の 苑に遊ぶとき

「道の駅」の管理センター。シルバーの事務所があります。
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りっぱな外観。
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山荘入り口前の、モミの木。
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こちら赤松。モミも松も、葉は明るい若緑です。
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伐採依頼をした西の山から。春の光にあふれています。
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こんなふうに、倒れ木がごろごろ。
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ついでに山に奥に、妻と分け入りました。
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コシアブラの幹が、白く輝いています。
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北の尾根に向かって写しました。
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分かりにくいかと思いますが、タムシバの花芽です。
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青空に伸び立つタムシバ。花の咲くのが楽しみです。
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コナラ。こずえが日に輝いています。
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同じく。
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これは黒松。いつかは枯れるでしょう。悲しむのはその時にしましょう。
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東の山のコナラ林。この味わいを、写真では表現できないのが残念。
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同じく。
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散り残るシロモジの黄葉と、コシアブラの白い幹。
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コシアブラの白い幹が、青空に映え。
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ヤマツツジの枝で、羽毛が風に靡いていました。
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以上、2013.3.4撮影
プロフィール

カイ

Author:カイ
奥三河・作手郷の風景を、「テレジアの森」から、お届けします。2010年9月より、娘の生活、生い立ちをとおして、より深い心の風景としての作手郷を紹介します。

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