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森の木、ヤマツツジ

 ツツジ科の半落葉低木。春の葉と夏から秋の葉の別があり、秋の葉は冬芽のまわりに輪生して越冬。ひとつの冬芽から、花芽と葉芽の両方が出ます。全国に自生し、日本の野生ツツジでは分布域がもっとも広いとされています。テレジアの森では、ミツバツツジに継いで開花。色は緋の色、若葉の山に、あざやかに映えて咲きます。

 山の桜が散る頃、白い桜の花と対をなすように、ヤマツツジの朱の花が咲き初めます。桜が空に枝を広げ下陰の人々を包み込むように咲くのにたいし、ヤマツツジは人の目線に真向い、その緋の色の花を投げかけるようにして咲きます。挑戦的でもあり、人の視線を突き放しているようでもあり、それでいて人の心を誘い込む趣きがあります。

 ヤマツツジで思い出すのは、半世紀近くも前の或る丘山風景です。わたしがまだ少年であった頃の、かの丘のヤマツツジの緋の花の群落風景。そしてほんのかすかな、少年の日の淡い感傷ともかかわり、ヤマツツジの真紅の花を見ると、老いた今でも遠い日をうっすらと思い出したりします。その丘は現在広大なスポーツ公園となっていて、昔日の面影はありません。

 少年の日の淡い感傷、そして妻との結婚、加奈さんの誕生、働いて働いて四十年が過ぎ、そして老い呆けた今のわたし。そしてやがて訪れる、誰にも訪れる、死。長い長い苦しい人生でもあり、過ぎ去れば短かくもあり、ただ加奈さんの幸を祈り、ヤマツツジの緋の花を心に、そんなとりとめのない思いが揺らぎました。

※物がなしく病の床に活けてある山躑躅ばな照りあかりたり(中村憲吉)

 ヤマツツジそのものを詠んだ歌は、意外に少ないようです。アララギの著名歌人によるこの歌は、ヤマツツジの鮮烈な趣きが、病との対比の中で詠まれています。

※くれないの花咲き盛るヤマツツジ杖つく吾子がのぼる山のみち
※加奈さんが杖つきながら腰かがめヤマツツジ咲く山路をのぼる
※加奈さんが転んでしまった春の午後ヤマツツジ咲く山峡のみち

雲ふんわりと若葉の上に。
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年毎にふとります。
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なんとあざやかに。
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ヤマツツジ、素朴なあざやかさです。
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シャラの若葉を透かし。
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ざっくばらんに、ヤマツツジ。
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ヤマツツジのくれない。
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山荘の庭を見下ろす加奈さん。
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5.13撮影

山の幸、ワラビ

 コバノイシカグマ科の羊歯植物。イノモトソウ科とする説もあり、また手元の昭和五十二年発行の広辞苑では、ウラボシ科と記されています。これらについては学術的な問題なので、わたしにはこれ以上立ち入る知識はありません。日本原産とされ、日当たりの良い山の斜面や草地などに生えます。北海道から九州まで分布し、日本人であるならば、ワラビを知らない人の方がめずらしいのではないでしょうか。

 春の山菜としては、もっともポピュラーな植物ですが、発がん性物質など毒性のある化合物を含むことでも知られています。一般的な調理法としては、ワラビのおひたし、卵とじなど。また自家製というわけにはいきませんが、初夏の和菓子のワラビ餅は、ワラビの根から取れるデンプンを原材料にしています。さらにワラビの食用の歴史をふり返れば、はるか縄文の時代にまでさかのぼると言われています。ちなみに日本原産の野菜は、ワラビを含め、数えるほどしかないそうです。

 食するワラビのイメージがあまりにも強いため、わたし自身、ワラビの姿に注目することはほとんど皆無でした。ただ顧みれば、他の草に比べると、つくづく奇妙な立ち姿に見えます。花の咲くはなやぎのない代わり、全体に奇妙な愛らしさがあります。地に低くすっと立つその色も、あまり自己主張のない謙虚な淡いみどりです。

 いつの時代からか、ワラビの姿を家紋や意匠に、日本人は利用してきました。古くは蕨手刀(わらびてとう)、また家紋の花蕨、蕨桜、そのほか着物の意匠などにも、蕨の素朴な風情は利用されたようです。ただし現代では、通常それらを見る機会は皆無といってよいでしょう。そのせいかわたし自身、毎年手にしているにもかかわらず、ワラビの素朴で可憐な美しさを目にとめることはありませんでした。

※石(いわ)ばしる 垂水(たるみ)の上の さ蕨(わらび)の 萌え出づる春に なりにけるかも/志貴皇子(しきのみこ)

 ワラビの歌といえば、まずこの万葉歌が取り上げられるほど有名です。ふつう乾燥地に生えているため、若干現代のイメージとは異なります。古代の人々は、わたしたちとは違った感性でもって、ワラビに対していたのかも知れません。暖房もない時代の、厳しい寒さから開放される喜びは、現代人とは比較にならないほど、強烈だったと思います。

※無心にもあらなく吾らワラビ採るただ食わむためわが山峡に
※太りたる芽をやや反らし地に低く生(お)うるワラビを採りゆく妻と
※笹を刈り日当たりの良き山なだり生うるワラビの太きを採りゆく
※ふくらかにその先の葉をくるみつつ淡きみどりにワラビ生うるも
※なぜこんな羊歯植物を食うのかと今宵のワラビを妻と笑いぬ

 ちなみに、この春のわが山のワラビはほとんど細く、或いは萎え、太るワラビはほんのひと握りほどでした。たかがワラビですが、野生採取の歴史は過ぎ、管理栽培の時代になったのかも知れません。

※いつ如何なる気候のゆえかこの春のワラビは細くあるいは萎えぬ
※年どしにワラビ少なくなる谷と怪しみて居るなす術すべもなく

森の木、カスミザクラ

 バラ科の落葉喬木。桜の野生種の一種。ヤマザクラより、やや遅く開花します。葉脈などに軟毛。命名の由来は、遠くから見た花の咲くさまが、霞みのように見えることから。北海道、本州、四国にかけて分布。多くの人々の目には、ヤマザクラもカスミザクラも、同種の花と思われているかも知れません。

 このゴールデンウイークの前半(2013.4.27-29)、テレジアの森は、ことのほかカスミザクラが美しく咲きました。まさに霞みのように谷山の斜面に咲き盛り、その花霞みの様子が微妙に変化しつつ、三日間が過ぎました。二十数年、テレジアの森に通い続け、初めての出会い。数限りない白い花びらが、光の中を風に揺らいで空に踊り、静かな静かな山峡の、風と光と花との交響でした。

 山荘に到着したその日の朝、わたしたちを迎えてくれたカスミザクラの白い花木立。細かな白い花を木立に散りばめ、その名のとおり霞のようにいく本もの花むらが空に広がっていました。そして少し強い風に揺らぎながら、時折花びらを舞わせます。仰ぐ青空には、ぽかりぽかりと白い雲が浮かんでいました。

 山峡に夕ぐれが訪れると、花むらの白さがいよいよ清かにあでやかさを増します。夕闇に浮かびあがるカスミザクラの花明かり。しかし夜となりゆくにつれて次第にその色を失い、ついには闇の中へと紛れます。そして真夜、山荘の外に出て谷に佇めば、ふくらかな月の光に谷はほの白く明るみ、幽玄の色の花木立があえかにあらわれます。

 夜が明け、東の山の端から朝日がのぼる頃、カスミザクラの白い花むらは、微妙な輝きを見せます。低い位置からのぼる太陽の光が、斜め横から白い花むらに差し込みます。わずかにアカネを帯びた光が、ほのか紅差す白い花と、またくれない帯びる若葉と呼応して、カスミザクラの花むら全体に、白地にかすかな黄金の光をかもし出します。朝露に濡れているのか、それは清新な花の輝きです。

 露が乾き初める頃、白い花の木立を、オオルリがよぎりました。朝の日を返した、その瑠璃のつばさのあざやかなこと。一瞬の美しさでした。

谷山の斜面のカスミザクラ。
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白い花むらと雲。
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霞む花むらと、雲湧く青空。
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若葉の中に。
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カスミザクラの下陰の路。
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青空に松の緑、瑪瑙の色の葉桜とミツバツツジ。
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松の緑とカスミザクラの白。
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4.27撮影

森の木、ミツバツツジ

 ツツジ科の落葉低木。中部地方を中心に太平洋側に分布。痩せ土の山などに生育します。若葉の出る前に紅紫色の花が咲き、名前の由来は、枝先に三枚の葉がつくことから。トウゴクミツバツツジなど多くの種類があり、作手のものは、コバノミツバツツジです。

 愛知県三河地方に住んだ人なら、おそらく誰もが目にはしているツツジです。このことは中部地方全体にも言い得ることであり、つまりそれほどにありふれた木ということになります。ただ、その木の花を見ているにもかかわらず、その木の名を知り、意識する人は少ないかも知れません。

 名古屋市の中心ビル街から、ほんの三十分ほど車で走れば、若葉の郊外に、その花をありふれて見ることができます。あまりにもありふれているため、目にはしても人の意識には残らないようです。実に無造作に雑木林の中にその花を見たりします。

 不思議な花だと思います。一般には紅紫色と表現されますが、凡庸な花の色という印象です。ヤマツツジほど鮮やかな紅ではありませんし、レンゲツツジほどの大輪の華やかさはありません。平凡な花だと思います。しかしありふれていながら、なぜか不思議に、わたしは惹きつけられます。

 ミツバツツジの花の咲くさまは、わたしの幼かった頃の思い出によみがえります。春の弘法さんの命日に、山路をめぐり歩いた記憶です。頭上にはヤマザクラの白い花がそよぎ、背丈ほどの目に近く、ミツバツツジのうすくれないの花が咲いていました。そうした山路をめぐり歩き、幼いわたしは、ふるまわれることのささやかな喜びを感じていました。戦後の貧しい時代であり、ことのほかわたしの家庭が貧しかった頃です。

五分咲きほど。
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三メーターほどあります。
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赤松を背景に。
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山路を散歩。
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杖をついて。
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笑いながら。
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何がおかしいのでしょう。
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4.21撮影
プロフィール

カイ

Author:カイ
奥三河・作手郷の風景を、「テレジアの森」から、お届けします。2010年9月より、娘の生活、生い立ちをとおして、より深い心の風景としての作手郷を紹介します。

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